2013年7月27日土曜日

YCAM 山口情報芸術センター設立10周年記念祭コンサート:ヤン富田 「禅と生命体と宇宙線」セットリスト

YCAM 山口情報芸術センター設立10周年記念祭コンサートに招聘され演奏してきました。
ステージ背面の超巨大なスクリーンには演奏の模様が映し出されます。スペースチェアに横たわるのは今回の宇宙飛行士・小山田圭吾さんです。小山田さんの脳波を解析、音楽信号に変換し、内的、外的宇宙の旅に出かけました。また映像は宇川直弘氏のDOMMUNE によってライブ・ストリーミングされました。
コンサートには直径6mの自家用 UFO を1機持参しました。YCAM の音響及び設備は東洋一と謳われるだけ
あって、巨大UFO も舞台袖に格納できました。スタッフさん6人かがりによって素晴らしいタイミングで
登場/退場することが出来ました。


ヤン富田「禅と生命体と宇宙線」 セットリスト:YCAM 情報芸術センター 2013.7.27
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:ご挨拶及び「意識の拡大に関して」

1.  『A.S.L. の知覚の扉 エピソード  1~4:意識の拡大と脳波及びサウンド・ロボット』
  小山田圭吾 - 脳波提供被験者、宇宙飛行士
  COMPUMA - 助手、被験者介護
  ロボ宙 - 助手、被験者介護
  ヤン富田 - バイオニック・ミュージック・システム & エレクトロニクス

2. 『宇宙飛行士・ナンバーαに於けるバイオフィードバック・データの解析』
  小山田圭吾 - 脳波提供被験者、宇宙飛行士
  COMPUMA - 助手、被験者介護
  ロボ宙 - 助手、被験者介護
  ヤン富田 - バイオニック・ミュージック・システム & エレクトロニクス

:音楽に関するお話

3.  [ 光と音の多元的考察から]:『光と音の行方シーン1~3』
  ヤン富田 - 空間光線探査砲 、意識ほぐし機 & エレクトロニクス

4.  [ A.S.L. のエイリアン調査計画から]:『who are you? / あなたは誰?~スペース・トーク』
  ロボ宙 - エイリアンNo.2 & スペース・トーク
  ヤン富田 - エレクトロニクス

5.  『A.S.L. のジェットセット』
  Jetset Crew:COMPUMA、ロボ宙 & 小山田圭吾
  ヤン富田:航空交通管制交話 & エレクトロニクス

ライブ・カメラ:宇川直宏 (DOMMUNE)
写真:グレート・ザ・歌舞伎町



2013年7月12日金曜日

2013年3月6日水曜日

ヤン富田 パフォーミング・アーツ『実存と構造と生命体』

5月5日(日)アサヒ・アートスクエアに於けるヤン富田ライブのお知らせになります。



実存を音、構造を音楽として位置づけると、
音には発する音そのものの理由が生ずる。
その音の理由を解放するパフォーマンス。


前売券のe plusでの販売は終了しました。
ご購入ありがとうございました。


注:WINDBELLでの前売受付は締め切りました。
沢山のお申し込みありがとうございました。

2013年1月23日水曜日

「ピコンという名の頭脳委員会」

(第3回アシッドテスト『実存と構造と生命体』より、楽曲の構造ー凡例3からの発言を文字起こしして校正)


(楽曲試聴後...)

これは、私が制作した1989年のいとうせいこう "MESS/AGE" というアルバムからの「メッセージ」という楽曲です。オケはカリプソ・シンガー、マイティー・スパローのアルバムからサンプリングして作った作品です。当時(1988年)このアルバムを持っていたのは、私だけだったと思うんですけど、アハハ。ミュージックマガジンでカリプソの原稿を書いてた深沢さんは持ってなかったし、故中村とうようさんも持ってなかったと思います。でもまあ、コレクターの事も考慮すると日本では多めに見積もっても五人位いたのかも知れません。それで、このお話のポイントはそのことにあるのではなくて、曲の後奏部分でピコン、ピコンと唄ってるでしょ、そのピコンっていう事のお話なんです。

カリプソというのはリズムの名称ではなくて社会風刺歌の事なんです。皮肉たっぷりに面白可笑しく日常の時事ネタを唄って笑い飛ばすというもので、その風刺の度合いをピコンといいます。支配体制との闘いの中から生まれたもので、カリプソ発祥の地トリニダード・トバゴでは、カリプソシンガーは国を代表する頭脳委員会的な位置づけにあるのです。ですから普段は学校の教師だったりする人が、年に一度のカーニバル時にはカリプソニアンとなって活躍したりします。

"MESS/AGE" は、アルバムの冒頭部分と最後の楽曲にカリプソを持って来て、核が爆発した地球の事をテーマにしようとディレクションをして、いとうさんが歌詞を創っています。


思い出はあの夜  熱にうかされ ふくらむ月

黒ずんだ空と 濁る海の色  おみやげ絵ハガキ 捨てて出てくよ

まぶしいカビがただよう夕焼け  くせになりそうだった 居心地良くて


すばらしい星にさよなら 必ずまた来るよ 出来るならそれまでは

ヒトいればいいけれど


(ピコン、ピコン、ピコン)


これはその歌詞の抜粋ですが、アルバム"MESS/AGE" はそうしたことで、奥行きのあるアルバムとして上梓できたと自負しています。


それでまあ、こんどは、1992年と94年に、スティール・ドラム発祥の地でもあるトリニダード・トバコに渡って、私のソロ・アルバム "MUSIC FOR ASTRO AGE" と、ASTRO AGE STEEL ORCHESTRA 名義での "HAPPY LIVING" というアルバムを制作するのですが、それらのアルバムのキャストは、1983年に初めてトリニダードへ渡った際のリサーチで大方決めていました。


"HAPPY LIVINNG" の制作では、マイティー・スパローと並ぶ国民的ヒーローであるカリプソ・シンガー、ロード・キチナーの楽曲をカバーしています。  "Hold On To Your Man" という1964年の作品で、「スティールバンドの奴らが町にやって来る、奴らに心を奪われないようにしっかりと抱きしめて...」といった内容のロードマーチです。キチナーは特にスティール・バンドの重要なレパートリーとなるロードマーチの名曲を数多く遺した音楽家で、国の宝として庶民に圧倒的な支持を得ていました。


当初、唄はキチナーにお願いするつもりでいたんですよ。当地のブッキング・マネージャーからは、「トミタ、キチナーは一曲◯ドル出せば来てくれるよ」と言われました。その提示した額というのは、おそらく、私にオファーを断念してもらう為の方策で、それからブッキングマネージャーとの橋渡しをしてくれた、現地在住の日本人の方の面目を保つ意味もあったのでしょう。でなければ単に私からのオファーをキチナー・サイドが断ればいいだけの話ですから。それに国の宝でもある我らがヒーロー、キチナーが参加するの?と、現地のスタッフから戸惑いのような空気も感じていました。


それで、その額は当地ではそうゆうスキャンダラスな驚くような額ではあるのですが、実は、当時は私のような者でもアルバム制作費としては潤沢にあったので、可能な額だったのです。 ここでジャパン・マネーの威力をかってキチナーに唄ってもらえば、アルバムとしてはヒストリカルな作品になるのは判っていました。世界中にファンがいるのも知っていました。ただそれよりも、その額でお願いして演ってもらった場合、おそらく彼らはその事を、皮肉たっぷりに面白可笑しくカリプソにしてしまうだろうなと思ったのです。そのくらいの事は彼らカリプソニアンはするのです。めちゃくちゃ頭が良いですから。それでホテルにもどって一晩考えて頼むのをやめました。




( "Hold On To Your Man" 所収のキチナー1964年発表のアルバム。)



(1983年、ヤン富田とロード・キチナー、首都ポート・オブ・スペインにて)