画像のページは、「大人の科学マガジン:エレクトリック・スチール・ドラム特集号」学研 (9/2014)
|
画像にあるパンは、1986年に完成された世界初のMIDI制御によるデジタル・スティール・パンです。デザインは私がして、製作をある楽器メーカーに依頼しました。右側にあるラックでプログラム・チェンジや各音板に対応した感度調整、メモリー機能等が可能です。構想2年、製作には1年かかりました。 当時、スティール・ドラムを使って爆音のヒップホップをどうしても演りたかったのです。これを「コズミック・パン」と命名し、87、88年と合計で4回だけでしたがステージで披露しました。
音程を検出する圧力センサー部は、感圧電動ゴムのパッドに音板のそれぞれの形状に即したアルミ板を貼りました。打面部のボディは実物のパンから型取りした樹脂製で、スカート部分はクロームメッキが施されたドラム缶です。コントローラーからの信号をMIDI変換するコンバータには、各打面の感度を細かく個別に調整することが出来て感度を上げていくと干渉が起こります。これを上手く調整することで、隣り合った打面の音源を鳴らす事も可能でした。この点で所謂MIDI PAD (MIDI PERCUSSION) 等よりもMIDI STEEL PAN としての機能とその可能性がありました。本来、STEEL PAN の調律/音色の調整(ブレンドといいます。隣合った音板の倍音を調整して音色も構成して行く。) では、ハンマーで音板の端を叩いて倍音を調整しますが、コズミック・パンでは感度調整のネジを回すといった行為がそれに相当しました。当時は考えてもみませんでしたが、この仕様の特許を取得しておいてもよかったかも知れないと感じます。2007年になってトリニダード製のMIDI PAN が世界初という触れ込みで商品化されました。いくつかのメーカーが存在し、特許を取得したメーカーと他社の間で訴訟騒ぎが起こりました。特許を取得したMIDI PANですが、これはスティールパンの形状をしたMIDI PAD にプリセット音源が内蔵された仕様でした。
Otona no Kagaku Magazine - Electric Steel Drum Issue 9/2014 GAKKEN
アンプで増幅するパン、エレクトリック・パンに関して:
私の知るところでは、1960年代中期から開発を始め71年に一様の完成をみたバートフォン (Bertphone) があります。これはパンマンでありパン製作者として現在のパン・サウンドの礎を築いたパンの科学者、バーティー・マーシャル (1936-2012) によって研究開発されました。また氏はダブル・テナーパンの考案者でもあります。バートフォンがどんな音がしたのか聞いていませんが、バーティーの事だからきっといい音がしたのだと思います。これはダンパーペダルが付いていて音のリリースを調節できるようになっていました。その後も研究は続きましたが80年5月7日の火災と資金不足のため研究半ばで断念したそうです。その原型となる資料が現在、西インド諸島大学内にあるPan Research Lab. に所蔵されています。
画像中央、バーティー・マーシャルと、
Image center, Bertie Marshall at Port of Spain, Trinidad1991
Image center, Bertie Marshall at Port of Spain, Trinidad1991
1982年、中西俊夫率いるMELONにスティールパンでの依頼がありました。ピテカントロプスという日本のクラブ文化の出発点となったお店でのライブです。MELON はここのハウス・バンドで、東京ブラボーとミュート・ビートの合体メンバーとコーラス隊からなる11~13人編成でした。参加メンバーはニューウェーブやパンクの影響を受けていて、だからなのかメンバーは全員アンプのボリューム10でした。パンの音はマイクで拾っても埋もれてしまいます。そこで当時ビル等の耐震計測する際に開発されたテープ状のセンサーを改良したアタッチメント(バーカスベリー社のものをグレードアップした仕様)をパンのスカート部分に貼って専用のプリアンプで増幅してました。
90年代後半にもトリニダードでは、製品化はされていませんがレクトラパン /Lectrapanというアンプで増幅するパンが作られましたが、これはサウンドに難があったそうです。
News Paper : Trinidad Express, January 25, 1997 新聞で紹介されたレクトラパンの記事。
************************************************
1987年 COSMIC PAN のお披露目となるデビューライブから、ヤン富田グループ/1987の演奏。
************************************************
ヤン富田グループ/1987 「宇宙のささやき」
************************************************
ヤン富田グループ、1988年 COSMIC PAN 使用の演奏から
************************************************
1987年 COSMIC PAN のお披露目となるデビューライブから、ヤン富田グループ/1987の演奏。
************************************************
Yann Tomita Group/1987
LIVE AT SHIBUYA, TOKYO 1987
LIVE AT SHIBUYA, TOKYO 1987
高橋誠一:Keyboards 椎名謙介:Tape Head Violin 永井利充:Bass
DUB MASTER X:Vinyl Beat Of Two Turntable ヤン富田:COSMIC PAN
ヤン富田グループ/1987 「土星のパトロール」
Yann Tomita Group/1987 “Patrol Of The Saturn”
Yann Tomita Group/1987 “Whispers From Space”
ヤン富田グループ、1988年 COSMIC PAN 使用の演奏から
************************************************
ヤン富田グループ LIVE 1988.8.21 flyer 主催者のTANAKA PROMOTIONは、友人の田中晢弘さん 現在は渋谷 オルガン・バーのオーナー。 |
Yann Tomita Group/1988
LIVE AT INK STICK SHIBAURA FACTORY, Tokyo 8/1988
LIVE AT INK STICK SHIBAURA FACTORY, Tokyo 8/1988
秋山浩一:Drums 斎藤ノブ:Percussion (Leather & others)
椎名謙介:Electronics & Handmade Equipment 高橋誠一:Keyboards 立花ハジメ:Guitar
永井利充:Bass ヤヒロトモヒロ:Percussion (Hardware & others) ヤン富田:Cosmic Pan
Yann Tomita Group/1988 “B Rhyme”
Yann Tomita Group/1988 “Give Me Your Love”
Yann Tomita Group/1988 “X Rated”
Yann Tomita Group/1988 “Introducing The Band”
Yann Tomita Group/1988 “For My Baby”, Mighty Viper’s Calypso “Yann Is The Good Steel Pan Man” & “Princess Charming”
************************************************
© 2020 Audio Science Lab.